「大人からバイオリンを始めたけれど、毎日どのくらい練習すれば上達しますか?」
これは、大人の初心者の方から非常によくいただく質問です。
仕事や家事、育児など、毎日忙しく過ごしている中でバイオリンを始める場合、
「毎日1時間、2時間練習しないと上達しないのでは?」
と不安になる方も少なくありません。
しかし、結論から言えば、大人の初心者にとって大切なのは、単純な練習時間の長さではありません。
むしろ、
「どのくらいの時間を、どのように使うか」
そして、
「無理なく継続できる練習頻度をつくること」
が重要です。
大人の初心者なら、まずは「1日20~30分」を目安に
これからバイオリンを始める方であれば、まずは1日20~30分程度をひとつの目安にしてみましょう。
もちろん、毎日30分練習できなければ意味がない、ということではありません。
例えば、
- 月曜日:20分
- 火曜日:30分
- 水曜日:休み
- 木曜日:20分
- 金曜日:30分
- 土曜日:40分
- 日曜日:20分
というように、生活に合わせて練習時間を調整しても大丈夫です。
大人の場合、仕事などの都合で毎日同じ時間を確保することは簡単ではありません。
そのため、
「毎日必ず○時間」ではなく、「1週間の中で継続的にバイオリンに触れる」
という考え方のほうが、現実的です。
10分しか練習できない日があっても大丈夫
「今日は10分しか練習できなかった……」
そんな日があっても、気にする必要はありません。
10分しかないからといって、練習を完全に休んでしまうより、
- 開放弦を弾く
- 弓の動きを確認する
- 音階を少し弾く
- 前回のレッスンで習った部分を復習する
- 苦手な1小節だけ練習する
など、短時間でも目的を持って取り組むことには意味があります。
特に初心者の段階では、身体の動きを覚えていくことが重要です。
そのため、長時間まとめて練習することだけを目標にするのではなく、短い時間でも繰り返し楽器に触れる習慣をつくることが大切です。
1時間練習すれば、30分の人の2倍上達する?
これは、必ずしもそうとは言えません。
バイオリンの練習では、ただ同じところを何度も繰り返して弾けばよいわけではありません。
例えば、
「音程が少し低い」
「弓が指板側に寄っている」
「右手に力が入りすぎている」
「次の音への移動が遅れている」
など、自分の演奏のどこに問題があるのかを把握して、それを修正する練習が必要です。
これは「何となく曲を最初から最後まで何度も弾く」という練習とは少し違います。
音楽の技能習得に関する研究でも、単純な練習量だけではなく、具体的な目標を設定し、自分の演奏を確認しながら修正していくような、目的を持った練習の重要性が指摘されています。
つまり、
60分なんとなく弾くより、30分集中して課題を明確に練習する。
という考え方も非常に大切です。
初心者におすすめしたい「30分練習」の組み立て方
例えば、1日30分練習できる場合。
① 基礎練習:5~10分
まずは楽器と身体を慣らします。
- 開放弦
- 弓の練習
- 音階
- 指の準備運動
など、その日の課題に合わせて行います。
② 苦手な部分の練習:10分
ここが非常に重要です。
曲を最初から最後まで弾くのではなく、
「この2小節がうまく弾けない」
という部分を取り出します。
ゆっくり弾いたり、リズムを変えたり、弓の使い方を確認したりしながら、原因を一つずつ解決していきます。
③ 曲を弾く:10~15分
最後に曲を通して弾きます。
ここでは「間違えずに最後まで弾く」だけではなく、
「今日は弓を意識する」
「今日は音程を意識する」
など、その日のテーマを一つ決めておくと練習の質が上がります。
同じところを100回弾くより、「考えながら弾く」
初心者の方にありがちなのが、
「間違えたから、もう一回!」
という練習です。
そしてまた間違える。
「もう一回!」
また間違える。
これを繰り返してしまうことがあります。
しかし、ここで大切なのは、
「なぜ間違えたのか?」
を考えることです。
例えば音程を外したのであれば、
「左手の指が届いていないのか」
「前の音からの移動が原因なのか」
「そもそも指番号が合っているのか」
を確認します。
原因を考えずに繰り返すのではなく、
問題を見つける → 原因を考える → ゆっくり修正する → もう一度確認する
という流れをつくること。
これが、大人の初心者にとって非常に効率のよい練習方法です。
「毎日同じ練習」より、内容を少し変えるのも効果的
練習では、同じ場所を長時間繰り返すだけでなく、複数の課題を切り替える方法もあります。
音楽学習の研究では、異なる課題を一定間隔で切り替える「インターリーブ練習」が、長期的な学習や記憶の保持に役立つ可能性が示されています。
例えば30分なら、
音階 → 弓の練習 → 曲の苦手な部分 → 曲を通して弾く
というように、内容を切り替えてみる方法です。
一つの練習だけを延々と続けるよりも、頭を使って演奏することになります。
長時間練習する場合も「休憩」が大切
「休日だから今日は2時間練習しよう!」
というのも悪いことではありません。
ただし、初心者の方が突然練習時間を増やす場合には注意が必要です。
バイオリンは、腕や肩、首、手などを細かく使う楽器です。
疲れている状態で無理に練習を続けると、身体に余計な力が入ったり、フォームが崩れたりすることがあります。
特に長時間練習する場合は、途中で休憩を入れたり、練習内容を変えたりすることが大切です。
演奏家の身体的負担についての研究でも、練習量を急激に増やさず、休憩を取りながら練習を分散させることの重要性が指摘されています。
「週に何時間」よりも、まずは「続けられること」
大人からバイオリンを始める場合、
「仕事が忙しいから、毎日1時間は無理……」
と考えてしまう必要はありません。
最初から完璧な練習時間を設定するより、
「まずは20分だけ弾いてみる」
くらいから始めてみましょう。
20分が習慣になれば、余裕のある日は30分、休日は1時間というように、少しずつ増やしていけばいいのです。
バイオリンは、一日で身につくものではありません。
だからこそ、
1回の練習時間を最大化することより、長く続けられる練習習慣をつくること。
これが、大人から始める方にとって非常に重要です。
大人だからこそ「効率のよい練習」を
大人からバイオリンを始めることに、
「子どもより遅いのでは?」
「今からでは上達しないのでは?」
と不安を感じる方もいるかもしれません。
しかし、大人には大人の強みがあります。
自分で練習時間を管理し、
「今日は何をできるようにするのか」
という目的を持って練習することができます。
大切なのは、長時間練習できるかどうかではありません。
限られた時間の中で、何を練習するのか。
そして、
昨日より少しでもできることを増やしていくこと。
それを積み重ねていくことで、少しずつ演奏できる曲も増えていきます。
「忙しいからバイオリンは無理」と決めつける必要はありません。
まずは、1日20~30分。
あなたの生活の中に、バイオリンを弾く時間を少しだけ作ってみてください。
その小さな積み重ねが、数か月後、1年後の大きな違いにつながっていきます。
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